お久しぶりです。また半年ぶりになってしまいました。
今日はタイトル通りPh.D.の試験に合格した報告です。とにかくようやく受かりました。一度落ちたので(下で説明します)、後がなく、めちゃくちゃ緊張しました。最悪、2度目に落ちたら進級できない→退学→在留の理由がないので強制帰国、となるところでした。
Ph.D.の関門について
私が所属するUCSDのNanoengineeringではPh.D.コースの学生は4つの試験があり、
1.Comprehensive exam(必修5科目のペーパーテスト)
2.Literature review(博士論文の背景論文まとめプレゼン)
3.Qualifying exam(博士論文執筆準備のための試験)
4.Thesis defense(博士論文発表)
です。これは私の学科の例で、1年の冬学期にComprehensive exam、2年のうち(正確にはComprehensive examを受けた次の年の12月まで)にLiterature reviewを受けることになっています。Qualifying examは3年か4年あたりに受けるもので、これが一番厳しいです。具体的には今までやってきた研究とこれから卒業するまでの研究に関するプレゼンをする感じです。試験の前には筆頭で書いた論文が一本以上あるはずなので、それがベースになると思います。ここで指導教官を含む5人の教授のコミッティーからいろいろ質問されて答えます。これに合格するとPh.D. studentからPh.D. candidateになり、給料もちょっと上がります。また、研究室内の大学院生内では上級生扱いになり、下級生を教えたりポスドクみたいな仕事をするようになります。Defenseも同様に厳しいですが、そもそもそこにたどり着いたということは卒業できる力があるとみなされているので、Defense自体は最後の晴れ舞台みたいなイメージです(本人はどう思っているのかわかりませんが)
で、話を戻して今回のLiterature reviewですが、日本語で言えば「論文紹介」みたいなもので、扱いとしてはQualifying examの準備編で、自分の研究結果はほとんど出しません。ただし、コミッティーを3名選出するので、本当にQualifying examの予備試験のようなものです。
他大学や他学科でシステムや要件は異なるのですが、だいたい「1年目か2年目に何かの試験」、「3年目くらいにQualifying exam」「最後にDefense」という流れは共通だと思います。
Literature reviewについて
個人的には「一番やりづらい試験」でした。普通の研究発表だと、自分がやっていることを発表すればいいのでそこまで構成に苦労することもないのですが、今回は「博士論文を進めるうえでの文献調査能力の試験」みたいなもので、範囲も自分で設定するものでした。その設定に失敗したのが一因で、一回目は落ちました。ちなみに論文紹介は「○○が××を使って調べたら△△の結果がでました」というものの羅列ではなく、ストーリーだてて説明する必要があります(大学院生の方は当たり前だと思いますが)。言い換えれば、自分である程度ストーリーを作り、それをサポートする情報を論文からとってくるようなものでしょうか。とにかく難しかったです。
一回目(7月31日)
先に言いましたが、一回目の試験は落ちました。忘れもしない7月最終日です。今までの試験で、「落ちる」なんてことがなかったのでめちゃくちゃショックでした。先輩と話をしても、「落ちることはない」と聞いていたので、余計ショックでした。敗因はある程度はっきりしていて
・トピックが広すぎ
・プレゼン練習不足
・試験に関するリサーチ不足
です。
トピックが広すぎ
今思えば私の一回目は「○○が××を使って調べたら△△の結果がでました」をひたすら繰り返すものでした。つまり「広く浅く」で、教授からある手法について深堀する質問が来ると、緊張と理解不足でうまく回答できませんでした。Literature reviewの正しい戦略はあるトピックに対して「狭くめちゃくちゃ深く」でした。ちなみに私の一回目のプレゼンタイトルは、日本語では「正極電解質界面の分析手法」というめちゃくちゃ広いものでした。
プレゼン練習不足
これは完全におごりです。プレゼンはぶっつけでもある程度できると思い、資料作りをギリギリまでやっていました。結局資料は試験2時間前くらいに完成し、1,2回程度流して練習するのみでした。実際本番では「… something like that(… みたいなもん)」を連発し、指導教官がプレゼン中にぶち切れるという失態を犯しました。
試験に関するリサーチ不足
プレゼンの資料確認や発表練習は先輩の学生やポスドクにみてもらっていましたが、Nanoengineering出身の人には見てもらっていませんでした。つまり、実際に試験を経験した人のアドバイスをもらっていなかったので、Literature reviewに求められているものを正確にとらえられなかったと思います。これはプレゼンを見てくれた先輩やポスドクの責任ではなく、完全に私のミスでした。
メンタル崩壊
一回目の試験に落ちた後、メンタルがやられました。正確に言うと、試験後は「次頑張るぞ」とポジティブに切り替えができたのですが、その後の指導教官の2度にわたるzoomでの直接的フィードバック(はっきり言うと説教)でやられました。あと、あと不合格直後のグループミーティングでも研究室メンバーの前でも公開説教されました。気分は最悪でした。ゆとり世代原産の豆腐メンタルは一気に崩壊しました。実際に、研究室を変えるとか、帰国して仕事探しするとか、ヨーロッパの大学院行こうとかいろいろ考えました。研究室の先輩後輩、ポスドクなどいろんな人に助けてもらいましたし、大学のメンタルヘルスのカウンセリングも受けました。現状もメンタルが回復したのか、それとも自分がファッション鬱を気取っているのかわかりませんが、たまに不調なときがあります。(実際に鬱で悩んだり苦しんでいるかたに比べたら大げさかもしれませんが)
最近は少し自分をいたわるようにしています。
2回目の試験(10月28日)
最悪な夏休みを過ごしたあと、10月に入ってようやく2度目の試験の準備をはじめました。具体的には上記の反省を生かして、同じ轍を踏まないのが基本方針です。つまり、「トピックをめちゃくちゃ絞る」「プレゼン資料は90%は3日前に完成」「試験を受けた先輩からのフィードバックをもらう」です。今回のプレゼンタイトルは「中性子深さ分析を用いたリチウムイオン電池材料の研究」と手法の部分を固定しました。プレゼンの練習は通し(30分)で10回程度はしました。あと、あらゆる質問に対応できるように開始30分前まで補足スライドを作り続けました。本番は一度フリーズしましたが、先生方の優しい誘導もあり、何とかクリアできました。プレゼン後の質疑も全答でき、最終的には合格できました。
振り返り
振り返ってみると、Ph.D.生活最悪の夏でした(というか人生で最悪の夏でした)。7月末に落ちてから10月末に合格するまでずっと不安な気持ちが付きまとっていたし、試験前の一週間ぐらいの朝は胃痛ではきそうでした。試験前日なんかは本当に胃液がリバースしそうで、食事もあんまりとれませんでした。試験は午後2時からだったんですが、当日は朝にマフィンとコーヒー程度しかのどを通らず、それ以降は水を飲みまくっていました。しばらくはメンタルに優しい生活をしたいと思います。
ネガティブなことを書いてきましたが、一応私は元気にやってます(笑)
ではまた。